結核菌に感染したとしても、正常に免疫機能が作用すれば、菌の活動を抑えることができ、発病することもないはずです。免疫機能は、疲労と栄養状態によっても影響されるので、普段から栄養バランスの整った食生活を心がけ、ストレスや疲労を溜めないようにすれば、未然に結核の発病を予防することができます。
それでは、結核を予防する食生活のポイントを紹介します。主食のご飯には、胚芽米や玄米を使用し、キビやアワ、小豆などを加えて炊き、食べる前に青海苔や炒りゴマなどをかけましょう。主菜や副菜には、緑黄色野菜や根菜類、小魚などを取り入れましょう。また、動物性食品を摂りすぎないようにし、生野菜や果物、白砂糖が含まれるものは避けましょう。
青梅を煮詰めた「梅肉エキス」は、代表的な民間療法の万能薬です。また、副作用はなく、伝染病に優れた効き目があると言われています。梅肉エキスは、有機酸が豊富なので、白血球の喰菌作用(体内に侵入してきた細菌やウイルスなどを食べる作用)を高めて、結核菌やヴィールス菌、化膿菌に有効に作用します。そのため、風邪を引きやすい人が、毎日梅肉エキスを4〜8g飲み続けると、風邪を引にきくい体質に改善されますし、結核にかかっている人にも、優れた効能を示します。さらに、吹き出物や湿疹の出る人にも、梅肉エキスによる薬効は期待できます。
最近は、酸化食品を過剰に摂取する人が増えています。そのような人たちには、白血球を正常に機能させる梅肉エキスが有効です。外出先や旅行などに持参すると重宝します。
結核病棟の看護師は、医療従事者の中で、結核感染率が最も高くなります。なぜなら、結核菌を吐き出している患者と接する時間が最も長いからです。
では、看護師は患者と接していても大丈夫なのでしょうか?結核病棟の看護師は、結核の患者を看護するのが仕事なので、咳をして結核菌を出している患者と同じ部屋で過ごすことも多いです。とても危険に感じますが、看護師はなぜ結核に感染しないのでしょう。
それは、「N95微粒子マスク」という、結核菌を防ぐ特別なマスクをしっかり装着しているからです。当然ですが、結核内科の医師なども装着しています。つまり、結核菌を吸い込まなければ、結核に感染することはないということです。
ただし、しっかりとマスクを装着していないければ、結核菌が隙間から入ってくることもあります。やはり結核病棟の看護師はリスクがあるので、危険な業務として手当てが給付されています。そうでないと、他の病棟で働く看護師と不公平になります。
病院の職員は、結核感染の正しい知識と健康診断を受ける必要があります。結核病棟に新規職員を採用した際は、胸部X線検査とツベルクリン反応検査を全員に実施して、ツベルクリン検査で陰性の人は、BCG接種を行います。また、年に1回、胸部X線検査を行い、必要な場合はツベルクリン反応検査を実施します。
もし、結核に感染した疑いのある場合は、適切な検査を行い、予防的な化学療法を行って経過を観察します。
結核患者は、入院中、毎日にどのように過ごすのでしょうか?結核だからと、特別な生活を強いられるわけではなく、むしろ、ほかの病気での入院生活と比べると、結核患者は退屈かもしれません。というのも、結核は、自覚症状が2〜3週間で軽減し、2ヶ月くらいすれば80〜90%が陰性化します。つまり、治療を始めて1ヶ月くらいすれば、症状が治まって体調は健康な人と同じくらいになります。それも、結核の症状は、風邪とあまり変わらないからです。
ただ、結核の治療は期間がとても長いので、患者はどうしても入院生活に飽きてしまうと思います。体調が良いのなら、誰でも退院したくなるでしょう。ところが、結核は菌が完全に出なくなるまで入院治療を受けないといけません。退屈かもしれませんが、この機会に、体をゆっくり休めるのも良いでしょう。
なかなか結核が治らない「重症結核」の場合は、結核菌がどんどん肺を壊して行き、症状も悪化します。そして、肺機能が低下するので、呼吸器の機能も障害を受け、呼吸が正常にできなくなってしまします。そうなると、血中の酸素と二酸化炭素の割合に変化が現れ、体に異常が起きます。呼吸が自分でできなくなるほど悪化すると、「人工呼吸器」を使用しなければなりません。もっと重症の場合は、病棟から出て「ICU(集中治療室)」で治療を進めることになります。
人工呼吸器は、呼吸によって喚起が自分でできないために使用するので、症状が良くなれば装置を外せるようになります。
結核病棟では、結核患者が入ってくるので、その患者から出ている結核菌の飛沫核が拡散しないように、防止しないといけません。拡散防止対策には、主に次のことが行われています。
・紫外線空気殺菌器を設置しています。この装置は、結核菌を紫外線で殺菌するもので、病棟や部屋に設置しておきます。
・結核病棟の部屋は、陰圧換気にします。「陰圧」とは、結核菌が部屋の外へ出て行かないようにするもので、「換気」は特別な装置で1時間に6〜8回行います。
・結核病棟へ向かうエレベーターは専用にします。これは、結核患者と健康な人が一緒のエレベーターに乗ることを避回するためです。
・病棟と外来を、一般患者と結核患者で別にします。
これらのことは、結核専門の病院ならば整っていると思いますが、一般の病院では、お金の問題から完備するのが難しいです。やはり、結核にかかった場合は、結核専門の病院に行ったほうが良いでしょう。
結核にかかった場合の病院選びの注意点は、まず、結核病棟のある病院は少ないということを頭に入れておきましょう。病院ならば、どこでも結核病棟が設けられているわけではありません。そのため、一般の病院で診察を受けて、結核であったり疑いがあったりした場合は、結核病棟のある病院や専門病院に移らなければならないこともあります。一般病院で入院治療することもできますが、十分な設備が整っていなかったり、専門医がいなかったりすることが多いです。
また、ある程度きれいな病院が良いです。きれいな病院は、大体しっかりと設備が整っています。古い結核専門病院でも、感染対策における設備は万全でしょうが、生活面では設備が不十分であることもあります。また、結核専門の病院では、結核菌を診断する検査機器が最新であることもあり、短期間で検査ができ治療も順調に進められる可能性があります。
結核に感染しないようにするには、結核患者に近づかないことが一番です。しかし、結核菌は目で見ることができませんし、空気感染であるため危険です。また、結核に感染したかどうかは、通常、医療機関で検査して診断しないと判明しません。
狭いエレベーターなど密室で換気が十分でない場所に、結核患者と一緒にいることは、結核の感染率が高まりとても危険な状態です。もし、結核に感染している人に近づく場合は、「N95微粒子マスク」を着用しなければなりません。目の粗い普通のマスクは、浮遊している結核菌を防ぐことはできませんが、このN95微粒子マスクなら防ぐことができます。
「N95」とは、感染症の病原体の飛沫核を吸入しないための微粒子用マスクのことです。CDC(米疾病対策センター)が公開している、医療従事者のための結核感染防止のガイドラインでも推奨しているマスクです。この“95”は「空気中に存在する0.3マイクロメートル以上の微粒子を、“95%”以上を抑制することを意味します。また、防水加工も施されているので、汚染された血液や体液の飛沫感染にも予防効果があります。
つまり、95%以上結核菌を防御することが可能な“高性能マスク”ということです。結核患者と接する医療従事者は、このN95微粒子マスクを使用します。また、結核患者の家族が患者の病棟に行く際も、結核に感染してしまう恐れがあるため、このマスクを着用する必要があります。
結核の大部分は、結核に一度感染したけれど、その時は免疫の反応によって、結核菌を封じ込めたり消滅させたりして発病はせず、何十年後かに、封印されていた結核菌が、再び暴れることで発症します。つまり、空気感染によって結核をすぐ発症する場合もありますが、これまでに結核に感染したことのある人が、体の変化が要因となり、体内にある結核菌が暴れ出して結核になるのです。
それでは、結核菌が暴れ出すのはどのような時でしょうか?次のような人は、再び暴れ出す可能性が高いです。糖尿病の人、胃潰瘍や十二指腸潰瘍の手術を受けて抵抗力が低下している人、抵抗力の低い老人や子供、疲労やストレスが溜まっている人、長く喘息の薬やリウマチの薬を服用している人、粉じんを肺に吸い込む環境にいる人などです。
結核菌が暴れ出した場合は、肺をどんどん侵していきます。まず、肺に穴を開けていき、空洞を作ります。そして、肺や気管支を腐らせてしまいます。さらに進行すると、血管やリンパ腺に入って、結核菌を他の部分に運ぶ場合もあります。
結核菌は病巣内でいろいろな状態でいて、その状態が症状に現れるのです。つまり、結核菌が運動して活発に分裂しているということは、体はそれだけ侵されているということで、症状も悪化しているのです。そして、このような状態で放置しておくと、5年以内に50%が死に至る恐れがあります。そのため、結核に感染した場合は、すぐに適切な治療を開始する必要があるのです。
結核に感染すると、「感染菌量」「結核菌の毒性の強さ」「免疫力」が関わり合って発病します。
「感染菌量」は、結核菌に感染した時の菌の数で、たくさんの菌を吸い込んだ場合は、結核を発病する可能性が高くなります。「毒性の強さ」は、結核菌が強い菌であればあるほど、結核を発病しやすくなるというわけです。「免疫力」が低下しているということは、その人の体が弱っているということです。免疫力が低下すると、結核が発病しないように、菌を封印することができなくなってしまいます。
これら3つの要素を掛け合わせることで、結核を発病する確率がわかります。しかし、結核菌の量や毒性の強さなどは、実際には、はっきりとわかることではありません。そのため、自分たちができる最も大切なことは、免疫力を低下させないことなのです。そのために、バランスの良い食事をとり、規則正しい生活を送ることが大切です。
また、免疫力が低下するのは、次のような状態の人です。糖尿病や腎不全を患っている人、悪性腫瘍がある人、人工透析患者、抗がん剤を投与している人、HIV感染者、低栄養状態の人、手術後の人、高齢者、妊婦などです。
免疫力とは、細菌が侵入してきた際に、それを消滅させる能力のことです。通常は、結核菌が侵入してきても、免疫反応によってそれを殺そうとします。ところが、病気にかかっている時は、免疫力が低下しているので、結核を発病しやすくなり、特にHIVなどの場合は、かなりの確率で発症することになります。
「喀血(かっけつ)」とは、咳と共に、気管支や肺などから出血し外に出されることです。つまり、呼吸器系からの出血で、口からその血が吐き出されたもののことです。
喀血は、肺の血管や気管支、大動脈から出血することが原因です。また、気管支や肺の出血は、肺の損傷や結核によって起こります。疑われる疾患は、肺の疾患として、肺結核、肺がん、肺炎、慢性気管支炎などです。外傷としては、胸部外傷や気管支異物などが考えられます。
そのため、喀血は結核だけが起こるわけではないので、「喀血があったら結核」という判断はできません。ただし、喀血があったら、結核の疑いも入れておく必要があります。
それでは、喀血は死亡につながることはあるのでしょうか?結核にかかった場合、症状の1つとして喀血がありますが、結核で入院している患者では、薬によってコントロールされているため、喀血することは少ないです。つまり、結核の適切な治療を行っていれば、ほとんど喀血はないと言えます。そのため、結核に感染いても、喀血によって死亡することは少ないです。ところが、多剤耐性結核である場合は、薬が効かない状態なので、喀血によって死亡することもあります。
「吐血」も口や鼻を通る出血ですが、喀血との違いは“出血源”です。吐血は消化器系の器官が出血源です。喀血と吐血を判別するのは難しいですが、一般的に、喀血は咳などと一緒に出血し、真っ赤な色で、泡と一緒に出ます。吐血は、茶色や黒色の濃い色です。
日本では、「院内DOTS」といって、入院患者を対象に「DOTS」が行われています。結核予防法は感染症法へ統合されたことによって、結核での入院適応が拡がりました。菌を微量に俳出している患者や、耐性菌を排出する可能性のある患者も入院適応になっています。ここに、決して耐性菌を増やしていはいけないという意気込みを示しています。
入院中は毎日看護師が目の前で薬の服薬を確認します。ここでは、患者の治療を見守って、医療者とのパートナーシップを形成し、外来治療へ確実に橋渡しをすることが大切です。さらに入院中には、主治医や担当の看護師、保健所の医師や保健師などが参加する「DOTSカンファレンス」が開かれます。ここで検討されるのは、患者1人1人に関して、退院後のサポートをどのように行うかを決定します。
退院後から行われるDOTSを「地域DOTS」と言い、患者は3つにグループ分けされます。治療を中断するリスクが高い患者は、「外来DOTS」が行われます。これは、患者が毎日病院や保健所へ行くように促し、医療従事者の前で薬を服用してもらいます。
次に、それほど高いリスクはないが、介護が必要な在宅高齢者など、支援の必要がある場合は、「訪問DOTS」が選ばれます。保健師などが週1〜2回自宅を訪問して、服薬の確認を行ったり指導をしたりします。
これ以外にも「連絡確認DOTS」があり、月1〜2回以上、電話や家庭訪問、手紙によって、本人に服薬状況を確認します。また、薬剤師が行う「薬局DOTS」が行われている地域DOTSもあります。
結核治療において問題となるのは、患者の自己判断で薬を不規則に服用するなどの治療脱落です。このような場合、耐性結核菌が高い確率で現れるので問題となります。患者本人の治療失敗を招くだけでなく、周囲の人に耐性菌を感染させてしまう危険性もあります。
このような危険を防止するために、古くからさまざまな手段が試されてきましたが、有効な方法はとても地道なものでした。その方法とは、患者の服薬を医療関係者が目の前で毎回確認するというものです。これを直接服薬観察「DOT(ドット)」と呼んでいます。1980年代中頃、治療成績が良くなかった発展途上国の治療にこのDOTを導入して、確実な成績を残しました。そして、WHOはこれを受け継いで、痰から結核菌を排菌して感染性をもつ患者を見つけるシステムも加えて、きちんとした短期化学療法を達成させることを目標に、パッケージ化しました。これを「DOTS(ドッツ)」と名づけ、強力に推し進めました。
この方法は、1980年代後半からは発展途上国だけでなく、結核罹患率が上昇した米国でも非常に有効だったので、先進国における結核対策としても、DOTSの重要性は高いものであると認められました。日本では、1990年代後半から、ホームレスの人たちを対象とした結核対策で、DOTが一部の地域で行われました。そして、その高い効果から、全体的に行われる必要があると考えられ、厚生労働省が2000年に日本版DOTSを提唱しました。さらに、2004年に結核予防法が改正された際に、法の中に取り入れられました。
小児結核のほとんどが、初めて感染してから短期間で発症する「一次結核症」です。周囲の結核患者が結核菌を吐き出し、それを吸い込むと、肺内に結核の小さな病巣をつくります。病巣では、白血球によって、菌を封じ込めてしまいます。ところが、まれに、多くの結核菌が体内に侵入した場合や、抵抗力の弱い子どもの場合は、菌を封じ込める力がなく活発に菌が増えて、病巣が拡大したり、肺門部のリンパ節が腫れたりします。さらに進行すると、リンパ節で増殖した菌が、血液とリンパ液と一緒に、全身を蝕んでいきます。
小児結核は病状の進行が早く、結核患者から感染して2〜3ヶ月という短期間で発症します。また、感染して間もない頃に、発熱が一時的に起こる場合もありますが、その後は、病状がかなり進まない限り、咳や痰、食欲低下や発熱などの症状は現れません。
小児結核は家族から感染した例が多いので、家族などの接触者に、咳や微熱が長引いている人がいないを調べます。また、結核患者と接触した人に対して「接触者検診」が行われ、結核菌感染の有無、感染した可能性が高い場合は、発症していないかを判定します。
検診内容は、問診で感染源の結核患者の状況や接触した程度、過去のBCG接種歴やツベルクリン反応結果などを聞き、診察を行って、胸部X線やツベルクリン反応などの検査、必要な場合は血液検査を行います。
検診の実施期間は、小児の場合、感染後早期に発症するため、感染源が判明したらすぐに1回目を行い、2回目の検診を約2〜3ヶ月後に行います。
結核で生涯を終えた歴史上の人物はたくさんいます。また、結核は“悲劇の病”として、多くの文芸作品で描かれています。
新選組の「沖田総司」は、肺結核によって病死しました。そのため、幕末を描いている小説などでは、沖田総司を悲劇のヒーローとして描かれることが多いです。中でも、池田屋事件で彼が大喀血を起こしながら、大立回りをしたという話は有名ですが、本当に喀血していたか真相はわかっていません。
「正岡子規」は、21歳の時に結核を患いながらも、ペンネーム「子規」として俳句の研究に没頭しました。日清戦争では、記者として従軍して、帰国途中の船で喀血を起こしました。東京に戻ると歩くのも困難になって、「脊椎カリエス」と診断されました。
徳富蘆花(とくとみろか)の「不如帰(ほととぎす)」は、結核が“悲劇の病”という印象を決定的に与えた作品です。ヒロインの浪子は武男に恋焦がれながらも、浪子が結核を患ったことを理由に、2人の仲は悲しくも引き裂かれ、哀れに死んでいく物語です。後に、この物語は演劇や映画などとして数多く発表されています。
堀辰雄の「菜穂子」は、末期患者が主人公の作品で、サナトリウム(結核治療のための施設)を舞台として、結核を静寂で悲劇的な印象で描いています。死の影が忍び寄る清楚な少女の生きることへの意思を描いており、サナトリウムが一般に受け入れられるようになった作品です。また、堀辰夫も結核で病床生活を続け、病死しています。
そのほかにも、結核によって命を落とした有名人は、ショパン、高杉晋作、樋口一葉、石川啄木、新美南吉などがいます。
「薬剤耐性結核」とは、薬に対する耐性をもつ結核です。薬剤耐性結核は、次の3種類に分類されます。
「多剤耐性結核」は、第1選択薬の2剤が効かない結核です。「超多剤耐性結核」は、ほとんどの製剤に耐性をもっている結核です。「極度多剤耐性結核」(正式に定義されていない)は、薬剤の全てに対して耐性をもっている結核です。
多剤耐性結核になる原因は、主に次のことが考えられます。
・処方された薬を完治する前に飲むのをやめたり、医師の指示に従わずに服用したりするなど、不規則な薬の服用を行った。
・薬剤の副作用によって、薬を使用することができなくなってしまった。
・診断ミスなどによって、薬がきちんと処方されなかった。
・薬剤耐性結核に直接感染した。
薬の不規則な服用は、最も防ぐことができる耐性結核の原因です。私たちは「結核」という病気に対する理解と正しい知識をもたなければなりません。
薬剤耐性結核は、世界的にも広まっているという報告があります。81ヶ国における結核患者9万人に対する調査では、すでに45ヶ国に超多剤耐性結核の感染が広がっているようです。また、多剤耐性結核に関しては、年間約50万人の患者が出ており、新規結核患者900万人のうち5%が多剤耐性結核であると報告されています。さらに、日本においても、薬剤耐性結核は広がりを見せています。世界でも日本国内でも、広がっている薬剤耐性結核について、これから対策を強化していく必要があるのです。
かつて日本では、結核が大流行しており、「亡国病」と呼ばれ恐れられていました。約120年以上前の1880年頃は、男女の平均寿命は40歳以下でした。また、第2次世界大戦前後の1940年代には、日本での死因の1位が結核で、寿命も平均で50歳代前後とかなり短かったです。
戦後は高度経済成長や医療技術の進歩などもあって、現在、日本の寿命は世界1位となりましたが、結核に関しては、「先進国」とは呼ぶことのできない状況にあります。
戦後すぐは、結核にかかる率が非常に高かったのですが、徐々に少なくなってきています。しかし、日本の場合は、十分な対策が持続的に行われなかったことにより、今でも先進国の中で、罹患率が2番目に高い状況にあります。現在の日本でも、結核を新たに発症する人は年間約3万人もいて、2000人以上の人が毎年亡くなっています。今でもWHOは日本を「中程度のまん延国」としています。
日本の場合は、開発途上国と異なり、発病者の多くが高齢者です。戦時中や戦後に結核に感染して、年を取り免疫力が低下してきた今となって、発病するケースがとても多いのです。若い人々は感染したことがないため、結核菌を吸ってしまうと感染しやすく、感染してから短期間で発病する恐れがあります。また、結核は空気感染をするため、最近では、密閉状態の空間であるネットカフェやカラオケボックスなどに、不特定多数の人が出入りする所から、若い年代にも結核の感染者が増加する可能性があります。
「骨の結核」は、肺から血流に入った結核菌が骨に達したり、隣接している臓器の結核から結核菌が直接到達したりして、骨をゆっくりと壊していって変形させたり、膿瘍を作り上げたりする病気です。代表的なものは、「脊椎カリエス」や「肋骨カリエス」などがあります。脊椎カリエスと診断された場合は、排菌しているかなどを検査して、周囲へ感染しないように予防する必要があります。
脊椎カリエスの症状は、元気がなくなって微熱が出て、背中に重苦しくどんよりとした痛みが起こります。その痛みは、特に疲れた時に強くなり、休んでいると軽くなります。脊椎を叩いてみると、一箇所痛い場所があります。患者は痛みがあるため、背中を屈伸させるのが困難になり、背中を動かしにくくなります。
病気が進行すると、脊椎が壊されていくので、脊椎の一部が後ろの方へ突き出します。子供の場合は、成長と共に前かがみの姿勢になります。
皮膚が破れてしまうと、外へ溜まった膿が出始めて止まらなくなります。そして、化膿菌が破れた所から侵入し、混合感染をすると、高い熱が出て体が衰弱し、生命に関わる危険な状態になります。また、脊髄神経まで侵されると、下半身に麻痺が起こり、大小便が流れ出てしまうようになります。
脊椎カリエスを悪化させないためには、定期的に診察を受けて、医師の指示に従って安静にしていましょう。食事やトイレで起き上がったり、コルセットを勝手に外したりしてはいけません。また、規則正しい生活をして、無理な行動を避け、十分な栄養を摂るように心がけましょう。
「皮膚結核」とは、皮膚に結核が現れたもので、次の3つに区別されます。
1、結核菌が外部から侵入して、そこに病気を生じる場合。
2、結核菌が、肺結核などの病巣から皮膚に達して、病気を生じる場合。
3、皮膚やほかの部位の結核がアレルギー変化し、病変が皮膚に生じる場合。
「皮膚疣状(ゆうじょう)結核」は、ひざに多発し、ほとんど自覚症状はありません。境界がはっきりとした、盛り上がった病変をつくります。
「皮膚腺病」は、かたまりがリンパ節とその上部に生じ、頚部に多発し、ひじやひざ、肋骨、腰部にも生じます。穴が開いて、薄い血液が混じった膿が出ます。さらに進行すると潰瘍になりますが、周りは柔らかくて無痛性です。頸部リンパ節結核で、皮膚にその病変が達する場合がほとんどです。
「尋常狼瘡(ろうそう)」は、顔面、特に鼻に結節ができ、次いで潰瘍になります。青少年の女性に比較的多く発症している皮膚結核の代表ですが、日本では近年著しく減少しています。
「結核疹(けっかくしん)」は、発疹が左右対側性に多く生じ、比較的長い間発疹が存在して、再発しやすいです。発熱はありません。青年期の人に多発して、ツベルクリン反応検査では多くが陽性です。
皮膚結核の治療は、肺結核の治療に従って行います。また、栄養価の高い食事を摂取し、塩分を控えます。局所には、抗結核剤を粉末の状態で塗布するか、軟膏と混ぜ合わせて塗布します。家庭では、周りの人に潰瘍面に触れさせないようにしなければなりません。
「腸結核」は、回盲部(小腸から大腸へ移行する部分)に起こるのが典型的ですが、その他の部位も侵される可能性はあります。「クローン病」との鑑別の困難なのが問題です。クローン病とは原因不明の疾患で、主に口腔〜肛門の消化管の全域に、潰瘍と炎症が非連続性で起こります。肺結核の患者に高齢者が多いのとは異なり、腸結核は30代〜40代と若い人、特に女性が多くかかる病気です。
腸結核の症状は、腹痛が慢性的に生じたり、体重が減少したり下痢が起きたりします。肺結核の患者が、便検査を行った際に、偶然見つかることもしばしばあります。合併症として、まれに、腸閉塞や腸穿孔などが起こることもあります。
画像検査の所見では、患者の50%未満が活動性肺結核を伴っており、胸部レントゲン写真で確認することができます。診断の確定は、大腸内視鏡下にて生検を行い、乾酪性肉芽腫(乾酪壊死を中心とした肉芽腫)を認めたり、結核菌培養にて陽性となったりした場合です。
腸結核の治療は、抗結核薬を用いた化学療法が基本です。肺結核と異なり、活動性潰瘍がある場合でも、化学療法を4週間続けるだけで改善の傾向がみられます。化学療法は数種類の薬を組み合わせて進めます。副作用としては、腎障害や肝臓障害、聴力障害などがあります。腸結核は、ほとんどの場合で、外科手術の対象にはなりません。ただし、腸結核が進行する「結核性腹膜炎」を招きます。また、小結節が小腸と大腸の表面に生じて、腸閉塞を起こすことがあります。
女性の生殖器は、外界と膣→子宮→卵管の順に連絡している管状臓器なので、病原体が外部から侵入しやすくなっています。しかも、腹腔内に卵管が開口しているので、卵管に病原体が達すると、腹腔内に炎症が波及して「骨盤腹膜炎」になります。
原因としては、クラミジアが最も頻度が高く、注意の必要なのが結核です。そのほか、大腸菌やブドウ球菌、リン菌などが挙げられます。クラミジアは性交によって上行性に感染し、結核は性交と無関係に感染します。
骨盤腹膜炎の症状は、腹痛や腹部の不快感などが起こりますが、結核は症状に特徴的なものはありません。他の臓器に結核がある場合は、安易に診断できますが、腹膜炎だけの場合は、ガン性腹膜炎などと区別が難しい病気です。
診断は、ツベルクリン皮膚反応によって結核の反応をみて、結核の検査などが行われます。婦人科的な診察では、頸管と腹水の培養によって診断します。治療法は、一般的に、結核の内科的な治療法を行います。基本的には、抗結核薬を6ヶ月投与し、十分な効果が得られず耐性菌の場合は、必要な薬を適宜に追加します。6ヶ月の化学療法が終了した後は3ヶ月、6ヶ月、12ヶ月後に検査をそれぞれ行います。性器結核で内臓器と強く癒着している場合は、感染巣と考えられる臓器を摘出することもあります。
結核によって臓器の癒着がある場合は、不妊症となる可能性が高くなります。ただし、計画通りに抗結核化学療法を受ければ、死に至ることはほとんどありません。
「結核性心膜炎」は、数週間〜数ヶ月間、発熱や疲労感、寝汗が続きます。心嚢水(心臓の周りの袋と心臓に溜まっている液体)の塗抹と培養で、結核菌の陽性率は低いです。心膜生検で肉芽腫を証明・培養したり、PCRを行ったりすることで診断を確定できますが、侵襲性が高くなります。一般的には、他部位の結核菌を証明することで診断を推定します。治療方法は、肺結核と同じですが、後遺症として「収縮性心外膜炎」を残すこともあります。では、「収縮性心外膜炎」とはどのような病気でしょうか?
心臓は厚さ数ミリの心膜に包まれています。心膜には、心臓の柔軟性や大きさを調節する機能、炎症を防御したり摩擦を緩和したりする機能、心臓を一定の位置に保つ機能などがあります。
「収縮性心膜炎」は、心膜が瘢痕(はんこん)化して線維性肥厚を示し、石灰沈着を招いて、心臓の緊縮によって、常に心室の拡張が正常に機能できない状態になります。
収縮性心膜炎は、原因が確定できないことも多く、明らかなもは以前は結核性がほとんどでしたが、最近では、「特発性心膜炎」が増えてきています。
症状は、心膜の肥厚や癒着、硬化による心臓の拡張障害が起き、特に、右室の拡張が十分にできず、静脈系がうっ血してきます。左室の拡張へも支障を与えますが、肺の血流量が減っているため、あまり肺うっ血はみられません。また、静脈圧が上昇することで、腹水(腹腔内に大量の液体が溜まった状態)、肝腫大、浮腫などの症状も現れます。
「結核性髄膜炎」は、結核菌を感染することによって起こる髄膜炎で、死亡率は現在でも高くなっています。発熱や頭痛、意識障害が約2週間で進行して、難聴や失明、水頭症(頭に脳脊髄液という水分がたまる病気)といった、重い後遺症が残ることもあり、適切な治療を早期に受ける必要があります。また、亜急性に発症し経過すると、脳底髄膜炎を生じることの多い病気です。
亜急性に発症して、発熱や頭痛、嘔吐などの症状が出てきます。特徴的なのは、頭全体に強い頭痛がすることと発熱があることです。また、首が硬くなって、下を向くのが困難になります。進行すると、意識障害を起こして、さらに、視力障害やけいれん症状、脳神経障害などの髄膜脳炎を併発することがあります。
結核性髄膜炎の診断は、白血球の増加、ツベルクリン反応で陽性、胸部X線で異常が見られる場合などに認められます。また、髄液の検査、結核菌の塗抹検査・培養なども行われます。
頭部CTとMRI検査では、くも膜下槽の増強効果が認められ、進行している場合は、結核腫の形成、水頭症や梗塞巣の合併なども認められます。あお向けにした患者の頭を持ち上げると、硬い抵抗を感じます。
診断には髄液の所見が重要となり、結核菌が検出された場合に確定されます。早期に治療を開始することが大切で、診断や治療が遅れると、死に至る恐れもある病気です。後遺症が残る確立は約25%で、死亡率は20〜30%とされています。
結核の初期症状は風邪と似ていますが、微熱やせき、痰が2週間以上続く場合は、「結核予防会」の病院に早めに受診しましょう。結核予防会の病院が近くにない場合は、地域の保健所に問い合わせれば、結核診療ができる地域の病院を教えてもらえるでしょう。保健所の問い合わせ先がわからない場合は、「全国保健所長会」のホームページで全国の保健所を調べることができます。
結核に感染したかどうかについては、次の検査などで診断します。
「ツベルクリン反応検査」は、「ツベルクリン」という薬液の皮内注射を行い、48時間経過ごしたら判定します。BCG接種を受けた人や、結核菌に感染した人は、皮膚が赤くなったりしこりができたりします。痰が取れない人や、胸部X線検査で撮影することができない人に有効です。ただし、ツベルクリン反応だけでは、その反応が結核感染によるものか、BCG接種のためか判断することが難しいです。
「QFT検査」(クォンティフェロンTB-2G検査」は、血液検査によって調べる方法です。ツベルクリン反応検査の場合は、皮膚反応を判定するために、医療機関を再度訪れないといけませんが、このQFT検査は、試験管内で速やかに検査することが可能です。BCGワクチンに影響されずに結核感染を判定できるので、従来のツベルクリンに代わる検査として期待されています。
発病したかどうかは、「X線撮影検査」(胸部X線写真やCT検査)や細菌検査によって診断することができます。X線検査で発病の疑いがある場合は、痰の検査を行って診断します。「喀痰(かくたん)検査」では、結核菌を排菌しているかを判断します。
結核は“感染症”なので、発病すると周囲の人に移したり移ったりする可能性があります。ただし、病状によっては移らない場合もあります。
結核をわずらっている人が、せきやくしゃみにより菌を体外に放出することを「排菌」と言い、他の人がその飛び散った菌を吸い込むことで「感染」します。結核菌を吸ったとしても、必ずしも感染するわけではなく、体に抵抗力があれば菌は追い出されます。しかし、菌がしぶとく体内に残ってしまうこともあり、その場合は、免疫によって結核菌を囲み“核”(結核)を作ります。ほとんどの場合、体内に結核菌が残されていても、免疫の力によって押さえ込まれており、発病することはありません。このように、体内に封印されたまま菌が活動しない状態が「感染」です。感染しただけなら、周りの人に感染させてしまう心配はありません。
また、感染した全ての人が発病するわけではありません。「発病」とは、結核菌に感染してから活動を始めて、増殖した菌が体の組織を侵していくことです。症状が進行すると、菌がせきや痰と一緒に空気中に放出するようになります。ただし、発病しても排菌が起こっていない時は、他の人に移す心配はありません。
結核菌に感染した人は、5〜10%の確率で発病すると言われ、多くが感染してから2年以内に発病し、約60%の人が1年以内に発病しているようです。ただ、感染してから何年も何十年も経ってから発症する例もあるので、実状としてはいつ発病するかわかりません。また、何がきっかけで結核菌が増殖して発病するのか、まだはっきりと解明されていません。ただし、お年寄りや過労気味の人、病気で体力が落ちている人など、抵抗力が低下している人は注意しましょう。免疫力が低下している状態では、結核菌の活動が再び始まり、発病しやすくなると考えられています。
「結核」とは、体内に「結核菌」が入ることで生じる病気で、主に肺に症状が現れます。肺の内部に結核菌が増殖して肺が腫れ、やがて肺が壊れてしまい、呼吸する力もなくなっていきます。また、肺以外にも肝臓や脳、骨など体のさまざまな部分が侵されることもあります。
結核の初期症状は、せきや発熱など風邪と似ていますが、特徴的なのが、微熱やせき、痰などの症状が続くことです。また、食欲がなくなったり、体重が減ったり、寝汗をかいたりする症状も起こります。さらに進行すると、息切れがしたり、だるさを感じたり、血が混入した痰が出たりして、呼吸困難になり死亡することもあります。
昔の日本では、結核が大変流行しており、昭和25年までは死亡原因の1位になっていましが、適切な治療方法が研究され開発されてからは、一時期を除いては、患者数が減少してきています。ところが、現在でも年間多くの患者が出ており、命を落としている人もたくさんいて、日本における重大な感染症であることは変わりありません。さらに、世界的には、毎年165万人もの死者が出ています。
結核は、適切な治療により薬をきちんと服用すれば治る病気です。ただし、治療の途中で薬の服用をやめてしまったり、指示通りに服用しなかったりすると、薬に対して結核菌が抵抗力を保持し、薬が効かなくなってしまうことがあります。もし、結核と診断されたら、医師の指示に従い、薬を治療終了まで服用することが大切です。